日本から仕事を受注するアウトソーシング企業にとって、もっとも重視すべき数値はなんだろうか。
私は「手待ち時間の率(稼働率)」と「時間当たり売り上げ」だと考える。
●手待ち時間の率とは、その名の通り、「スタッフの仕事が無く、手待ち状態だった時間が、今月は何%だったか」という指標だ。
手待ちというのは、プロジェクトが無い、発注者のチェック待ち、リーダーがプロジェクト要件を整理している間の部下の待ち時間などがあげられる。
たとえば手待ち率5%であれば、1ヶ月のうち合計で約9時間の手待ちを意味する。一見、1ヶ月に9時間もやることがないというのは、「ずいぶん暇なんだな」と思う人もいるかもしれないが、受注産業であるアウトソーシングで5%を達成するのは至難の業である。仮に手待ち率5%を3ヶ月続けると、「忙しすぎる」という不満がスタッフからでてくるだろう。それくらいのキツイ数字である。
きちんと統計をつけると、10% 15%くらいの手待ち率になるのではないだろうか。
●IT系アウトソーシング企業は、製造業と似ているが、在庫を抱えることができないという点では、製造業というよりホテル業に近い。
その日の空き部屋は、明日に持ち越せないのと同じように、その日手待ちだったスタッフの労働力を明日使うわけにはいかない。
あるいは、あいているスタッフがいるからといって、頼まれてもいない設計や作図をするわけにはいかない。
したがって、1年を通じて繁忙度の波を受け入れざるを得ない、という運命を背負っている。
●さて、この繁忙度をどうにか平準化したい、と思うのが人の心だ。
しかし、繁忙度を平準化することは、簡単なことではない。
ホテルであれば、閑散期に割引して空き部屋を埋めたりするが、値段を下げたからといって、アウトソーシング企業へ発注してくれるほど企業人は甘く無い。
私は、繁忙度を平準化するような努力は報われない努力であって、やっても無駄、と思っている。
暇になりそうなときに発注者に「来週は手が空いていますから仕事をお願いします」と言っても、「無いものは無い」。
じゃあ、なるべくボリュームのある仕事をとって、波を小さくするか、と思っても、そう簡単に顧客のニーズというのは変わらない。
駅前のビジネスホテルが稼働率を上げるために、「なるべく長期滞在の家族連れに来てほしい」と思っても、そういうニーズがそもそも無いのと同じで、無いものねだりをしても仕方が無い。
つまり繁忙の波は、あるものとして受け入れるしかない。最初から通年で15%か20%くらいの空き部屋率=手待ち率という条件で価格設定をしておく必要がある。
●繁忙の波はどうにもならないけれども、正確に手待ち率を把握し、自分の会社の規模を縮小したり拡大したりできるのはホテルとは違う点だ。
上記の図で言えば、繁忙の波に対して、自分の会社の規模が大きすぎるのか、小さすぎるのかの見極めがいる。
1年を通じてほとんどの期間の手待ち率が15%とか20%だったら、社員を減らすか、顧客企業を増やすかして、規模を是正しなくてはならない。

●もうひとつ、稼働率を維持することは、各個人の効率を上げることにも増して重要である。
なぜなら、各個人の作業がいくら高くなっても、次の仕事が無ければ無意味だからだ。
例えば、10時間かかっていた仕事が7時間でできるようになった。でも余った3時間は遊んでいた。これでは、入ってくる収入は同じであり、何のメリットも無い。
3時間の作業効率アップは、次の仕事があって初めて意味がある。
つまり、各個人の技量を上げることよりも、矢継ぎ早に仕事が入ること=規模を適正に設定すること に注力するのが第1だ。
不思議なもので、稼働率があがれば各個人の効率というのは自然に上がっていく。次の仕事が控えているというプレッシャーは相当なもので、普通の神経であれば、今やっている仕事のスピードがおのずと速くなってくる。

●手待ち率を把握した後は、「時間当たり売り上げ」の把握だ。
簡単に言えば、「時間当たり売り上げ」=「会社の総売上」を「稼動していた時間」でザクっと割る。
日本に対し、仮に1時間1000円で請求している会社であれば、普通は目論見よりちょっと少なくて、「900円」くらいになるのではないだろうか。そうであれば、価格設定、スタッフのスピード、ともにまあ適正といえる。
もしこれが「700円」というような数字であれば、価格設定が間違っているか、よっぽどスタッフの作業が遅いか、あるいはデータを紛失するなどの事故があったかのいずれかである。
もし「1000円」という数字が出れば、それはちょっと出来すぎで、おそらくボッタくってしまったプロジェクトがいくつかあったのだろう。
設定よりも高い「1200円」という数字が続くようだと、いずれはもう少し単価を下げないと、顧客も高設定であることを見破るだろう。
(最近は円安ペソ高なので、1時間1000円では経営がきついのではないかと思うが、あくまで例です)
●さらに進めて、各スタッフの「時間当たり売り上げ」を調べるともっと面白い。
これを調べるのは結構難しく、そのスタッフの成果品の価値とそれに従事した時間を長期間にわたって記録する必要がある。
先ほどの例と同じで、仮に1時間1000円で請求している会社のスーパースターは1時間2500円くらいを稼ぎ、新人は1時間500円くらいしか稼げないことなどもわかってくる。
(しかし、裏方あってのスパースターなので、あまり各スタッフの「時間当たり売り上げ」に固執するのは意味が無い)
●さて「スタッフが忙しい=適正な繁忙度」かつ「価格が適正=時間当たり売り上げが設定と乖離していない」であれば、必ず会社は儲かる。
帳簿などを神経質に確かめるまでもなく、間違いなく「必ず」儲かっている。
それも、気がつくと口座には現金が溜まっている、くらいのウハウハ状態になるはずだ。
(儲かるような設定を最初にしているのだから当然だ)
ところが普通はそんなにうまくいかない。
でも、そこでここであげた指標を追跡することにより、
・想定より稼働率が低い(仕事が少ない)せいなのか
・設定単価は適正なはずなのに、時間がかかりすぎているのか
・設定単価が安すぎる(競争力を維持するためにイヤでも安くせざるを得ない)のか
というようなことが、かなりクリアにわかってくる。
つまりホテルのマネジメントがやっていることと同じことを、アウトソーシング企業もやればよいと思うのである。
ホテルの稼働率にもぴったり当てはまりますが、
よく考えていくと工場の稼働率とか仕掛かり品がどの部署で
たまっているか、どの工程の処理能力が高い、低いなど
工場のオペレーションにも当てはまると思います。
問題は工場の場合だと仕事が少ないからといって、マンパワー
tom in manila {196} 2007 年 5 月 18 日 @ 4:47 AMをあまりにも削ることができないし、機械も償却費があるから、つねに一定の最低限のコストがかかることでしょうか?まあ人を雇っていればその辺はアウトソーシングでも一緒でしょうけど。それに仕事の有る無しに応じて値段を上げたり下げたりというのはホテルと違ってできない。