『海外出稼ぎを含めた転職に関して』の巻
アウトソーシングに関する技術的なこと
2005年10月18日

●一段とフィリピン人の海外流出が強まっている。
新規応募で集まった履歴書が150。
そこから、算数テストで残るのが80人。
履歴書チェックで残るのが60人。
さらに電話インタビューで、海外にアプライしている者、海外に親戚がいるものをはじくと、残るのは25人。最近、この人数が本当に多い。
やっとこさCADの実技試験。これをパスするのが12人。
面接でさらに8人に減る。
研修中に2名ドロップし、採用が6人。
これが当社の典型的な採用パターンとなりつつある。
いままではさらに、プロベ期間中に海外に言ってしまう者がいたりして、いいスタッフを確保するのが難しくなってきた感じだ。
なので今回は、初めて、「研修終了後6ヶ月は、自己都合退職不可」の契約を盛り込んだ。いわゆるバインディング・コントラクトだ。この契約書を前に逃げ出したのが2名いた。

●フィリピン人全員、海外を狙っているといってよい。「海外に行く予定は無い」と言っている者も、友人に誘われ、全てのお膳立てが揃っているなら、明日にでも辞表を出すだろう。全員が予備軍と言ってよい。
庶民層は海外出稼ぎを狙い、富裕層はフィリピンを食い物にするためにフィリピンに居座る。でもいつでも海外に移住できる体制をとっている。つまり、ここの国民は、全員、片足がフィリピンという円の外に出てしまっているのだ。

●私もこの国に生まれていたら、間違いなく海外で働くことを目指すだろう。それほどまでにこの国には経済的魅力も展望も無い。
5倍、7倍の中近東に行こうと思わない者は、すでにこっちの会社で地位・権力を得た者か、出生記録に問題があって、パスポートをとれない者くらいではなかろうか。

●私は、給料の高いところへ人間が流れるのはごく自然なことであり、これを、あの手この手で食い止めるようなことは、反対の立場だ。
奴隷農場に有刺鉄線をめぐらせて、出て行かないようにするのと、何らかわりが無い。
囲い込まれたフィリピン人は不幸である。
以前メルマガに書いたが、自分の会社で3年か4年働いてもらい、そこで得た経験・知識を海外で生かし、彼が5倍7倍の給料をもらえるようになったとしたら、これは何物にも替え難い、ノブリスオブリージュとはいえまいか。

●「そんなことをいったって、ビジネスやっててそんな悠長なことをいってられるか。」
といわれそうだが、私の考えは、”3年か4年いてもらえば、十分回収できるようなビジネスモデル”を作るべきであって、5年10年いてもらえないと習得できないようなスキルを必要とするビジネスモデルがあるとすれば、そのモデルそのものが間違っている、というものだ。
3年か4年いてもらえば、十分回収できるようなビジネスモデルをつくるためには、
1)マクドナルドやスターバックスのようなマニュアルを用意し、知識経験を次の世代に伝授できるような体制を整えること。ここの国民には、マニュアルは細かければ細かいほどよい。CADのレイヤーも、10や20ではなく、100くらいに分かれていた方がよい。なぜなら、迷いが生じないからだ。
2)そして、「セルシオ」ではなく「カローラ」を作らせることだ。
がんばってたまにしか売れない、高度な技術を要求するセルシオを必死こいて作らせ、全員不幸になるよりも、廉価ではあるがたくさん売れるカローラを繰り返し作る。これが大原則だ。

●海外や給料の高い欧米企業に簡単に転職するフィリピン人を差して「フィリピン人には長期的展望がなく、目先の利益にとらわれて転職する傾向がある」という人もいるが、私はこの点についてフィリピン人を非難する気持ちは全く無い。
1)まずフィリピン人は日々の生活がすでにぎりぎりであり、長期的展望など考えている余裕がない。だれかが入院でもしたら、治療費のために誰かが海外に行かざるを得ないだろう。彼らは真剣である。彼らの30倍とか40倍の賃金を得ている日本人がフィリピン人の長期的視野の有無をとやかく言う資格はない。
2)そもそも日系企業に残ったところで長期的展望など存在しない。
来年にはいくら、5年後はいくら、というように年功序列賃金テーブルを提示している企業がいくつ存在するだろうか。「私の会社に10年いれば、自宅を買うことができ、中古車やパソコンを買うことができ、3人の子供カレッジに行かせ、万一の備えも多少できるようになります」などと言える社長など、どこにもいない。
日系企業の人のいう”長期的展望”とは、せいぜい”5年いればこういうスキルが身について、一人前になれますよ”といった歯の浮くような「賃金抜きの骨抜き展望」ではないだろうか。
3)明日の100ペソより今日の10ペソを選ぶフィリピン人はけしからん。
これもある意味フィリピンの国民性を表してはいるが、ドバイのように今後数十年も雇用が見込まれるところへ出稼ぎに行くことは、もはや「今日の10ペソ」ではなく、「10年にわたる1000ペソ」であって、比較の対象になりもしない。

●そうはいっても、スタッフには永くいてもらいたい。
自分の会社に少しでも永くとどまらせるのに、やはり有効だと思うのは、スタッフを信じ、密なコミュニケーションをとり、ちょっとだけでいいから多目の賃金。この考えは今も変わらない。

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